メールマガジン No1~10
★第1回 味噌に適した大豆 ★
弊社の商品をお買い上げのお客様に味噌に関する豆知識をメールにてご紹介し
ようと思います。今回は味噌に適した大豆についてです。
味噌は大豆、(米、麦)塩からできるもので、大豆は味噌を作るのに欠かせ
ない原料です(麦味噌や、豆味噌のように米はなくても味噌はできます)。そ
して味噌に適した大豆の特徴は、①蒸煮により大豆の組織が軟化しやすいもの、
②蒸煮した大豆の色が明るく鮮やかに仕上がるものとされています。
具体的な特徴を言うと、
大粒種であること。
種皮は薄く、黄白色で光沢のあること。
臍の色が淡いこと。
品種・粒の大きさが揃い、割豆が少ないこと。
吸水率が高いこと。
蒸煮が容易なこと。
炭水化物含有量が多いこと。
蒸煮大豆に食塩を加えても硬くしまらないこと。
保水性が高いこと。
となります。
味噌を作るとき使用されている主な大豆には国産大豆、中国産大豆、米国産大豆、
カナダ産大豆があります。
国産大豆は味噌に適した品種が多いのですが、生産量が少ない、価格が高い、同
一品種でも産地により品質が微妙に変わるという問題があります。
中国産大豆は国産大豆より価格も安く、味噌用大豆として多く使われています。
米国、カナダ産大豆は栽培契約の普及や品種改良により、食品用大豆としては中国
産大豆より使用量が増えています。
なお、大豆の中には遺伝子組み換え大豆というものもあります。しかし、味噌用に
使われる大豆には遺伝子組換えを使っていません。遺伝子組み換え大豆は臍の色が
黒いからです。大豆の臍は味噌の熟成後も残るので、味噌の色(特に淡色)によっ
ては黒い臍が目立ってしまい味噌に異物が入っているかのような印象を消費者に与
えてしまいます。大豆であり食べられるとしても誤解を受けるような大豆は使いに
くいものです。また遺伝子組換え作物の安全性についての様々な意見もあるので、
遺伝子組み換え大豆の使用しないほうが消費者への信頼を高められるという理由も
あります。
弊社の商品では国産大豆とカナダ産大豆を使い分けています。具体的には、ぬくもり
白、ぬくもり赤、うきこうじ、豆腐好み、江戸甘味噌、神奈川県産味噌、十二種雑穀
味噌、手作り味噌教室用の大豆は国産大豆を使用しています。
ゴールドかねじょう、ゴールド日本はカナダ産大豆を使用しています。
★第2回 味噌の色 ★
蒸した大豆や米の色は黄色や白い色をしていますが、味噌として完成すると
きには照りのある黄色や赤い色に変わっています。
着色のなかで加工、保存中に褐色に変わることを褐変といい、味噌では発酵・
熟成が関係してきます。発酵とは酵母や乳酸菌がエネルギーを得るために有機
化合物を分解して、アルコール類、有機酸類、二酸化炭素を生成する過程のこ
とです。熟成とは適当な温度、条件の下で長時間放置して、ゆっくりと化学変
化を行わせたりすることをいいます。
褐変する原因は、熟成時に酵素の働きで褐変する場合と、酵素とは関係なく
褐変する場合があります。
酵素の働きで褐変する場合、麹菌に含まれているポリフェノールオキシターゼ
という酵素の働きにより褐変します。
また同じカップや袋詰めの味噌をすこしづつ使うと色が濃くなっていくのも、
空気に味噌が触れるため、酸素を取り込んでしまうからです。家庭で味噌を使
用する場合、500gや1㎏単位で販売していますが、1回で使い切ることは
難しいので、封を最初に明けてから使い切るまでに色がある程度変わるのは避
けられないのです。着色を防ぐためには使うもの以外は封を開けず、開けたら
できるだけ早く使うという方法しかないと思います。
酵素の働きとは関係なく着色するのは、メイラード反応によって褐変します。
メイラード反応とは糖とアミノ酸が化学的に作用して褐変物質(メラノイジン)
と香りを産み出す反応のことです。味噌の褐変は主にメイラード反応により褐
変しています。
褐変は15度以上あると進みやすいので、発酵、熟成するときには冷蔵庫で
保管せず室温で保管したほうがいいです。逆に完成した味噌は着色を抑えたほ
うがよければ、冷蔵庫で保管したほうがいいです。なお冬季は気温が低いので、
どちらで保管してもあまり変わりないと思います。
ただ紫外線には褐色をすすめてしまうので、直射日光の当たらないところで
保管したほうがいいわけです。
★第3回 味噌の分類 ★
味噌の分類はどのようにされているのでしょうか。大きく分けると原料によ
る分類と味や色により分類されます。今回は原料と味の分類についてです。
原料による分類とは麹の種類により米麹を使う米味噌、麦麹を使う麦味噌、
豆麹を使う豆味噌に分かれます。さらに調合味噌という味噌があり、麦味噌と
米味噌を混ぜた味噌、豆味噌と米味噌を混ぜた味噌、米、大麦、豆以外の穀物
を麹として使う味噌のことをいいます。麦味噌は九州地方、豆味噌は東海地方
で主に作られています。米味噌はその他の地域で作られています。日本味噌の
十二種雑穀味噌も調合味噌の一つです。
「赤だし」と呼ばれる味噌は東海地方では豆味噌に調味料などを加えた味噌と
して販売されていますが、それ以外の地域では同じ「赤だし」でも豆味噌に米
味噌を混ぜた味噌として販売されています。なお「合わせ味噌」と呼ばれる
味噌は東海地方では米味噌に豆味噌を混ぜた味噌のことをいいますが、その他
の地域では色や原料の異なる味噌を混ぜた味噌のことをいいます。「合わせ味
噌」といっても味噌の種類は多様です。
味の分類は麹の量と塩分の高さにより決まります。麹の量が多くて、塩分が
低いほど甘みが増し、麹の量が少なくて塩分が高くなるほど辛くなります。塩
分が高く、麹が少ない味噌を辛口味噌と呼び、塩分が低く、麹が多い味噌を甘
味噌と呼びます。
甘味噌は分解糖化型味噌です。甘味噌は温度が約50℃で短期間で発酵させ
ます。約50℃になると酵母が増殖しにくく、酵素が働きやすくなります。酵
素の働きにより麹に含まれるデンプンを分解させ糖を作ります。甘味噌は麹が
多いのでより多くのデンプンを分解させる必要があります。また酵素を作り出
す麹菌の種類もデンプンを分解する酵素を産みやすい麹菌を使用します。
辛口味噌は発酵型味噌です。辛口味噌は時間をかけて発酵させるので、高温
にする必要はなく酵母や乳酸菌が働くことで発酵させることから言われていま
す。酵素の種類は大豆に含まれるたんぱく質を分解する酵素が中心で、麹菌も
たんぱく質を分解する酵素を産み出す麹菌を使うことになります。
そして乳酸菌や酵母が働く環境は食品中に乳酸菌や酵母が自由に利用できる
水の多さ(水分活性)が関係してきます。食塩や分解された糖は水に溶けるの
で、これらの量が多すぎると自由に利用できる水が少なくなり乳酸菌の増殖を
抑えてしまいます。乳酸菌を増やしつつ他の微生物を増やさないためには、適
切な食塩や糖の量にする必要があります。まず乳酸菌が増え、乳酸菌の出す乳
酸が酸度を増すことで酵母が増えやすい環境ができます。
辛口味噌の場合、塩分が高いので麹の量を減らすことにより微生物が自由に
できる水を確保することでができ、乳酸菌が増えやすい環境になります。甘味
噌の場合、麹の量は多く、麹に含まれるデンプンが分解され糖になり水に溶け
ている量が多いので、塩分を低くして乳酸菌の増えやすい環境を作ります。麹
の量と食塩の量は反比例する関係になるのは乳酸菌の増殖が関係しているので
す。
また味噌を作るときには酵母は味や香りに影響を与えますが、酵母は発酵・
熟成している地域や場所や気温、湿度に適応し変化します。変化した酵母は
味や香りにも影響をあたえ、同じ原料や配合で作った味噌でも個性がでてきま
す。酵母が変化して味噌に個性を与えることを「蔵癖がつく」と言われていま
す。だから同じ配合で作った味噌でも発酵熟成する蔵により、味や香りが違っ
てくるのです。
★第4回 味噌の分類 その2 色による分類 ★
前回のまとめ
味噌は原料と味と色から分類されます。
原料は使う麹の種類により米、麦、豆と分類されます。また3種類の麹の組み合わせや、3種類以外の麹を利用した調合味噌があります。
味は麹と食塩の量で分類されます。麹の量が少なく、食塩の量が多い味噌を辛口味噌といいます。麹の量が多く、食塩の量が少ない味噌を甘味噌といいます。
そして辛口味噌は酵母や乳酸菌のちからで発酵熟成させる発酵型味噌です。甘口味噌は酵素のちからで原料を分解していく分解型味噌です。両者の違いは使用する麹菌や熟成期間などにも関係してきます。
味噌の分類の最後の1つは色により分類されるのですが、色は多様で色に対応する表現も複雑で伝わりにくいところもあります。今回はできるだけわかりやすい表現で味噌を色で分類しようと思います。
色は、赤、青といった他の色と区別するよりどころとなる色相、あざやかさの度合を示す彩度、明るさ暗さの度合いを示す明度が組み合わさり表現されます。
味噌の場合、仕込みをしてから熟成する間に色は変化していきます。
仕込直後は白に近い肌色をしています。
熟成するにつれ、メイラード反応と呼ばれる、アミノ酸等と糖類が変化し褐色物質を作る反応により着色が進みます。着色がすすむと明るさが少なくなり、赤色が増します。また重石をして酸素が少ない状態で熟成させると乳酸菌が働きやすく、乳酸菌が作り出す酸の働きにより彩度が増しあざやかになります。赤色が強まりつつ、あざやかさが増すことを「照り」「冴え」があると言います。「照り」「冴え」がある味噌はすべての品質のよい味噌に共通した特徴です。
上記のような過程で熟成した味噌は「山吹色」と呼ばれる色になります。山吹色をしている味噌の特徴が淡色辛口味噌です。
その後味噌を実際に使用して空気に触れると、明るさが減少し、赤色も薄まり、「くすんでいる」という状態になります。
なお淡色味噌という言葉はあまり聞かない表現かもしれません。
「淡い」という言葉は薄いという意味ですが、白甘味噌と比べると明るさがより薄まるという意味で使われていると思います。「白味噌」というと白甘味噌と淡色味噌を含む意味になるので、両者を区別する 必要もあり淡色という表現を使っているのです。
これから淡色辛口味噌を基準に他の味噌の色を説明しようと思います。
白甘味噌は淡色辛口味噌と比べ、明るく、赤色が減少しているのが特徴です。「クリーム色」と表現されることが多いです。
赤味噌は淡色辛口味噌と比べ、暗く、赤色が増しているのが特徴です。「赤褐色」と呼ばれる色なります。
赤味噌で甘味噌の代表的な江戸甘味噌では赤味噌の辛口味噌よりさらに暗くなり「茶褐色」と呼ばれる色になります。
リンク
このように、味噌の種類は同じでも、原料や配合、熟成期間などにより微妙な違いが色にも出てきます。
直接商品を見比べてみると色の微妙な違いもよりわかると思います。
★第5回 手作り味噌キットの話 ★
8月下旬から手作り味噌キットの予約の受け付けが始まりました。発送は1
0月下旬を予定しています。
さて今月は味噌キットのマニュアルに書いてある内容を少し補足しようと思
います。今回は大豆について説明します。
味噌キットの大豆は真空パックされています。また真空パックする前には温
度を高くしたり、塩を混ぜたりしています。これらの目的は菌を増やさないこ
とです。
まず原料には菌が着いていて、大豆を水に浸すことで菌が大幅に増えます。
原料を混合する前では、菌が一番多いのも水に浸したときです。
水につけた後、大豆を蒸します。100℃以上に沸騰してから5分~10分
前後で蒸すことで水に浸したときに増えた菌はほとんど死滅します。その後、
大豆を冷ますときにはふたたび増殖します。熱に強い菌や、空気中にいる菌に
より増え始めるからです。
大豆を冷やした後、大豆に食塩を混ぜます。他の保存方法(酢など)ではな
く食塩を使うのは、仕込むときにも塩を使うので塩分量の調整がしやすいとい
う理由があります。一方、塩を入れすぎると、大豆が脱水し固くなり潰しにく
くなるという問題があります。そこで塩分量を調整する必要があります。手作
り味噌キットでは食塩を500g使っているので、大豆に混ぜる食塩の量は3%
ぐらいにすると辛口味噌の塩分量12~13%ぐらいになります。
手作り味噌キットで実際に使用している分量で、味噌の重量、食塩量、塩分割合
を計算してみました。
味噌の重量=大豆2400g+麹1260g+食塩500g+種味噌50g
+種水300g=4510g
食塩の量=仕込用食塩500g+大豆に混ぜる食塩72g(2400g×3%)
+種味噌に含まれる食塩6g(50g×12%)=578g
塩分割合=578g÷4510g×100=12.8%
大豆に混ぜた食塩は茹でるときに溶けだすので、溶けるのを織り込んだ食塩量
となっています。
大豆を真空パックすることで、菌の増加を抑え比較的長く保存ができるように
なります。なお完全な真空は人工的には作れないようです。
「キット製造日より1ケ月以内に仕込んでください」とあるのは大豆より麹が
関係してきます。次回に続きます。
★第5回 手作り味噌キットについて(2) ★
今回の話の内容
1 麹の説明と麹ができるまで
2 麹は長期間保存しにくい
3 参考 アオカビが出たら?
1 麹の説明と麹ができるまで
麹とは米、麦、大豆などのデンプンやタンパク質を含む原料に蒸すなどの前
処理をした後、麹菌を主体に培養したものです。麹菌のはたらきによりデンプ
ンやタンパク質を分解する酵素を産み出しています。
簡単に麹ができるまでを説明します。まず蒸米に種麹を散布します。その後
麹室(コウジムロ)と呼ばれる温度や湿度が管理された保温室で室温約28℃、
湿度90%くらいで42~45時間保温します。その後、麹自体の温度が呼吸
熱により上昇します。40℃を超えると麹菌が増殖しにくくなるので麹の温度
を下げる必要があります。温度を下げる方法として、麹の塊をほぐす(これを
「手入れ」と呼びます)、湿度を下げる、風を送るという方法があります。
日本味噌においては機械で麹の塊をほぐし、風を送り、麹の温度を下げます。
この場合湿度を下げると乾燥しすぎて麹菌が増えにくくなるので湿度は下げま
せん。以上の過程を経て麹はできます。
2 麹は長期間保存しにくい
できた麹はすぐに使うのがほとんどです。というのは特にタンパク質を分解
する酵素の機能(化学反応の反応速度を速める働き)が時間がたつにつれ低下
するからです。また、米を蒸すことで分解されやすい状態にある米のデンプン
が、長期間保存すると天然デンプンの状態に戻る(老化)のでデンプンが分解
されにくくなり、品質に悪影響を及ぼすからです。このような理由で麹は長期
の保存には向いていません。
それでも麹を保存する場合、冷蔵庫で5度以下にしたり、乾燥させることで
菌の増殖をおさえます。菌の増殖をおさえないと、菌が増殖することで温度が
上昇し、高温(特に40℃以上)に弱い酵素の機能が低下するからです。
そこで菌が増殖しやすい条件(温度や水分)を減らすことで菌の増殖をおさえ
ているのです。
手作り味噌キットの場合、麹を乾燥させて1か月程度保存できます。乾燥さ
せたうえ真空パックしたとしても、上記の通り酵素の機能低下やデンプンが老
化するので、1ケ月を超えての長期保存は難しいです。
ですからできるだけ早めに仕込む必要があったのは、麹の保存期間が関係し
ていたのです。
3 参考 アオカビが出たら?
なお麹を長期間保存しておくと、麹にアオカビがつくことがあります。アオ
カビは胞子が青色をしていて比較的低温でも繁殖することが特徴です。アオカ
ビと違うのはコウジカビは茶色がかった黄色に近いものが多く、比較的高温で
繁殖しやすいという点が違っています。
麹につくアオカビは空気中にあるアオカビの胞子が麹に着き増殖したもので
す。アオカビが発生するとカビのにおいや見た目の面があまりよくなく、他の
雑菌が繁殖してる可能性もあり仕込むのはおすすめしません。
★第6回 たまりについて ★
今回の話の内容
1 たまりとは?
2 たまりのできるしくみ
3 たまりを捨ててはいけない!
4 みそたまり浅漬けの素について
1 たまりとは?
熟成中の味噌は水気を帯びてきます。この水分は味噌の色に近い黄金
色や赤褐色をした色で透明感のあるとろりとした液体です。味はうま味
のある味をしています。この液体のことを「たまり」と呼びます。たま
りには糖分やアミノ酸などのうまみ成分やエキスが含まれており、これ
らの成分によりたまりがとろりとしてくるのです。
2 たまりのできるしくみ
たまりに含まれる水分はブドウ糖(酵素により大豆や米に含まれるデ
ンプンを分解したもの)を分解されることでできる液体です。ブドウ糖
を分解する働きは主に酵母が行なっています。酵母がよく働くのは熟成
時の酸素が多いときで、大量のたまりが作られます。
3 たまりを捨ててはいけない!
たまりは熟成するときにできる液体ですので、このたまりを切返すと
きなどにそのまま捨てないでください。このたまりは単なる水ではなく
うまみ成分が含まれているので、たまりを熟成中の味噌に戻すことでよ
りおいしい味噌が作れるからです。もしたまりを味噌に戻さずに熟成さ
せると味噌に含まれる水分も減少し、味噌は固くなってしまいます。
4 みそたまり浅漬けの素について
日本味噌では味噌教室や月1回の即売で「みそたまり浅漬けの素」を
発売しています。この商品も味噌からできたたまりを利用して作られた
商品です。たまりにはうまみなどの成分は含まれていますが、さらに調
味料などを加えることで浅漬けの素として使いやすくなっています。
★第8回 江戸甘味噌 ★
先月で今年の手作り味噌教室が終わりました。今回の教室では江戸甘味噌
が好評でした。教室の最後に飲む味噌汁も関係していたのではと思います。
次回は来年の2月3月に開催の予定です。詳しくは来年1月上旬にメールに
てお知らせします。
今回の話の内容
1 江戸甘味噌とは
2 味噌の分類 分解型と発酵型
3 独特の製造方法 留釜
4 独特の製造方法 熱仕込
5 江戸甘味噌の使い方
1 江戸甘味噌とは
江戸甘味噌は江戸の代表的な味として江戸時代から親しまれていました。味
は甘くとろみがあり、色は赤く光沢があるのが特徴です。麹の量は多く(大豆
と麹の比率が一般の味噌1:0.6に対し江戸甘味噌1:1.5)、塩分の量
は少ない(一般の味噌12~13%に対し江戸甘味噌5~6%)ことで甘さが
作り出されます。
2 味噌の分類 分解型と発酵型
江戸甘味噌は麹の使用量が多いので麹を分解する酵素の働きが重要になりま
す。酵素の分解する働きにより味噌ができる味噌のことを分解型味噌と呼びま
す。江戸甘味噌や京都の白味噌が分解型味噌の代表例です。
一方一般に売られいてる味噌は、乳酸菌や酵母の働きにより発酵熟成させ味
噌ができるので発酵型味噌と呼びます。日本味噌で製造する味噌は発酵型味噌
の種類が多くなっています。
3 独特の製造方法 留釜
江戸甘味噌は江戸時代以来の独特の製造方法により作られています。留釜
(とめがま)と熱仕込(あつじこみ)と呼ばれる方法です。留釜とは3日間
かけて大豆を80℃~100℃くらいの温度で蒸す方法です。沸騰と高温
(約80℃)を繰り返すことで、芽胞菌(耐熱性菌)を加熱殺菌し大豆が痛
まないようにします。また高温に置くことでメイラード反応(アミノ酸と糖
が反応し褐色物質を産み出す反応)が起きやすく褐色物質が作られることで
着色し独特の香りがつきます。
以下のPDFで3日間の大豆の色の変化がわかると思います。
4 独特の製造方法 熱仕込
熱仕込とは仕込を開始してから50℃くらいの温度を一週間程度保持し熟
成(高温消化)させる方法です。50℃くらいが酵素が働きやすい温度です。
酵素の働きにより麹に含まれるデンプンが分解され糖になります(糖化)。
糖があることでコクのあるまろやかな味に仕上がります。また麹に含まれる
糖と大豆に含まれるアミノ酸がメイラード反応により褐色物質が発生し着色
も進みます。
以下のPDFが熱仕込の風景です。
https://www.nihonmiso.com/touji/atsujikomi.pdf
留釜や熱仕込を経て独特の味や香り、色がつき江戸甘味噌ができあがりま
す。
5 江戸甘味噌の使い方
江戸甘味噌は肉や魚と相性がいいです。麹に含まれる酵素が肉や魚に含ま
れるたんぱく質を分解しうま味をだすからです。また酵素が肉や魚のくさみ
をおさえる働きもあるからです。使い方としては、炒め物や煮物に使うこと
ができます。冬の季節では鍋にも使えます。
土手鍋 https://www.nihonmiso.com/recipe/list_f/20.html
豆腐チゲ https://www.nihonmiso.com/recipe/list_g/02.html
また味噌汁としても使えますが、江戸甘味噌だけではとても甘いので、だ
しをとったり、ゴールドかねじょうなどの辛口味噌を混ぜることで関東や東
北の方でも飲みやすくなります。なお今回の手作り味噌教室でふるまわれた
味噌汁は塩麹に漬けた鶏肉を具材に使ったので、別に塩分を補うことをしま
せんでした。
★第8回 江戸甘味噌の歴史(1) ★
あけましておめでとうございます。去年からメルマガを始めたのですが、今
年はメルマガもより読みやすく面白くしていこうと思いますのでよろしくお願
いします。
今回のあらすじ
1 江戸甘味噌誕生の背景1 江戸の人口増加
2 江戸甘味噌誕生の背景2 味噌を買う人が増えた
3 江戸甘味噌の誕生
4 江戸甘味噌の発展
1 江戸甘味噌誕生の背景1 江戸の人口増加
江戸は、江戸城を中心に発展していくのですが、江戸城は扇谷上杉氏(関
東管領山内上杉氏の庶流)の家来である太田資長(道灌)が1457年に築
城しました。その後江戸城は上杉氏から後北条氏の支配に移りましたが、江
戸は地方都市に過ぎませんでした。本格的に城下の発展がはじまるのは、後
北条氏の滅亡後、徳川家康が後北条氏の旧領を受け継ぎ居城を江戸とした1
590年からです。その後、徳川幕府成立、参勤交代により江戸に住む武士
の数が増えました。また武士を支える商人職人も増えて、江戸の人口は18
世紀半ばから19世紀半ばで100万人から120万人近くいたとされてい
ます。
2 江戸甘味噌誕生の背景2 味噌を買う人が増えた
江戸時代の平均的な武士や町人には、味噌は味噌汁や調味料として食生活
に欠かせないものになっていました。味噌をどのように入手したかというと
伝統的に味噌は自分の家で作るもの(手前味噌)で、地方では味噌を家で作
る習慣が続いていました。一方、都市では味噌を買う人が多かったようです。
「味噌買う家に蔵が立たぬ」や「味噌を買うのは主婦の恥」という俗言があ
り、味噌を買う人が多いからこそできた俗言といえます。また江戸では町人
は限られた場所に密集して暮らしていたので、発酵や熟成の場所が必要とな
る味噌は作るのが難しかったことも、味噌を買う人が増えた理由ではないか
と思います。
3 江戸甘味噌の誕生
江戸は全国各地から人があつまり、味噌を買うひとも多かったので、味噌
も仙台味噌(赤味噌)や白甘味噌など多様な味噌が販売されていました。一
方、地方色にこだわらない江戸独自の味噌が生まれました。それが江戸甘味
噌と呼ばれる赤褐色で光沢のある甘味噌です。江戸甘味噌の誕生の年代は不
明なところもあるのですが、江戸時代中期には作られたとされています。
4 江戸甘味噌の発展
江戸甘味噌は塩分が少ないので長期保存に向きません。逆に新鮮さが売り
の味噌として江戸っ子に好まれました。また江戸甘味噌の生産も輸送に時間
がかかることから(当時は海上輸送が中心)江戸市中の業者が独占していま
した。独占することで稀少性が高まり江戸甘味噌は江戸の代表的な味噌にな
りました。また江戸甘味噌は米の使用量が多く高級品とされ、貧しい町人に
は手の出せない商品でしたが、それでも江戸における味噌の需要の六割以上
を占めるほど江戸っ子には愛用されていました。
江戸甘味噌はこの勢いで現代まで続いていたわけではありません。苦難の道
のりがあります。次回に続きます。
参考文献 みそ文化誌 全国味噌工業協同組合連合会
社団法人 中央味噌研究所
★第8回 江戸甘味噌の歴史(2) ★
今月から手作り味噌教室がはじまります。今回は2月22日と3月14日の
教室では味噌全般について詳しく説明する講習会を行う予定です。より味噌に
対する知識を深めていただくために、基本から詳しく説明を行います。
前回のメルマガでは江戸甘味噌誕生の経緯を説明しました。江戸時代に入り
日本全国から人口が江戸に集まり、各地の味噌も集まりました。そのなかで江
戸独自の味噌として江戸甘味噌が作られました。今回はその後の江戸甘味噌に
ついて説明します。
目次
1 食生活の洋風化
2 規格統制と江戸甘味噌の消滅
3 その後の江戸甘味噌
4 現在の江戸甘味噌
1 食生活の洋風化
明治以降、食生活も洋食が少しづつ取り入れられましたが、ご飯のおかず
に肉料理が追加されたにすぎませんでした。ご飯と相性の良い味噌汁も、明
治以降も食卓に引き続き出されていました。
江戸時代中期には誕生し江戸の代表的な味噌になった江戸甘味噌も、明治
以降、東京において消費される味噌の中心としての地位を維持していました。
江戸甘味噌は「極(ごく)」と呼ばれる高級品でしたが、東京の味噌の需要
の8割を占めていました。
2 規格統制と江戸甘味噌の消滅
第二次大戦により日本は物資食糧不足になるとして1940年8月、味噌
の規格を米、麦、豆の3種類のみとする規格の統一が図られました。さらに
味噌の価格も当時の市場価格より安く設定されました。これらの規制により
大豆や麹、食塩の量による味噌の多様化はできなくなりました。江戸甘味噌
も米味噌の一種であり、米(麹)を大量に使用する味噌であることからぜい
たく品として生産が中止されました。
3 戦後の江戸甘味噌
戦後価格統制や規格統一はなくなりましたが、江戸甘味噌は以前のような
東京において代表的な味噌ではなくなりました。信州みそなどの他の地域の
味噌が東京でも普及したからです。またパンを食べる人が増えたことにより
米を食べる人が減り、味噌自体の使用も減ったこともあると思います。
4 現在の江戸甘味噌
江戸甘味噌は伝統ある味噌として評価され、2004年、東京都地域特産品
の中から選ばれた東京都ふるさと認証商品に認定されました。
現在の江戸甘味噌は主に料理用として利用されています。江戸時代より続く
老舗のどじょう汁や川魚料理、鍋物などに利用されています。
また伝統の老舗だけでなく、新しいお客様には味噌が肉や魚のにおいを取る
効果があり、江戸甘味噌ではさらに独特の風味がつくことから料理のかくし味
などにも使われております。
また江戸甘味噌をベースとした味噌ラーメンも近年多くなっています。
参考文献 みそ文化誌 全国味噌工業協同組合連合会
社団法人 中央味噌研究所
★第9回 麹の語源 ★
3月30日、9時30分から10時00分までテレビ朝日の「食彩の王国」
という番組で江戸甘味噌の歴史と江戸甘味噌の使い方を中心に取り上げていま
した。
URL
その日はちょうど、味噌の即売日でもあったのですが、江戸甘味噌が通常時よ
りはるかに多く売れました。またネットショップでも江戸間甘味噌の注文が大
量にありました。テレビを見ている人が多いものだと思いました。
味噌をつくるときには麹が欠かせません。麹という意味がどのようにして
現在の意味になったのかについて説明しようと思います。
メルマガのあらすじ
1 こうじの意味
2 語源1 黴立ち(カビダチ)
3 語源2 噛む立ち(カムダチ)
4 補足と参考
1 現在の麹の意味
こうじとは蒸した米や大豆などの穀物に、コウジカビなどの食品発酵に必要
な微生物を繁殖させたものです。こうじを定義するとだいたいこのような内容
になっています。ただし、コウジの語源は大きく分けると二つあります。
2 語源1 黴立ち(カビダチ)
「日本語源広辞典」によると、カビ(黴)+ダチ(立ち)が変化したものと
麹の語源を説明しています。麹は酒造りで使われた歴史が古く、黴を利用して
酒を作るときに用いた言葉だとすると、現在のこうじの意味に近い語源です。
音の変化としては
カビダチ→カウダチ→カウジ→コウジとして現在に至ります。
3 語源2 噛む立ち(カムダチ)
「語源海」によると、噛む立ち(カムダチ)は生米や蒸米を口に含んでよくか
み、唾液で発酵させることです。このように酒を作る方法を口噛み酒といいま
す。この方法は酒造りとしては原始的な方法で、日本では縄文時代後期くらいか
ら利用された方法です。その後酒造りは麹などを中心とした製造になり、カムダ
チも酒造りとしての意味が残り、現在のコウジと同じ意味になっていきます。
音の変化としては
カムダチ→カウダチ→カウジ→コウジとして現在に至ります。
4 補足と参考
どちらの説も酒造りを共通としているのですが、読み方としてどちらもカウ
ダチから共通になるのですが、平安時代中期の和名類聚抄という辞書にカウダ
チとして出てきます。意味もこの時代あたりには現在のコウジに近い使われ方
をされたようです。
なお、醸ム(カム)という醸造するという意味の古語があります。語源が噛
むとおなじ口噛み酒からきてるという説と、黴す(カビス)という古語を語源
とする説があり、麹の語源のカビダチとカムダチの関係と似たものがあります。
コウジというのは麹のほかに糀という文字も使います。次回は漢字の説明を
しようと思います。
参考文献 日本語源広辞典 増井金典 ミネルヴァ書房
語源海 杉本つとむ 東京書籍
テレビ朝日「食彩の王国」
http://www.tv-asahi.co.jp/syokusai/
★第9回 麹の語原2 ★
メルマガのあらすじ
1 漢字について
2 麹の語源1 キク→朽→朽敗→腐敗
3 麹の語源2 掬う→みそ玉
1 漢字について
漢字というのは一つの文字で音と意味を表す表語文字と呼ばれるもので、
漢字の語源を探るときも音と意味から探ることになります。
漢字の語源を音から探るときは、もともとその漢字が持つ意味ではなく、音
が同じで違う意味の漢字を借り、借りた漢字の意味が語源となります。
漢字の語源を意味から探るときは、漢字の部首や旁(つくり)の意味から派
生した意味が語源になってきます。
これから説明する麹という漢字は2つの語源があり、音から探る方法と意味
から探る方法があります。
2 麹の語源1 キク→朽→朽敗→腐敗
「麹」は音読みでは「キク」と呼びます。キクは「朽」と同音で、「朽」の
古い意味は蒸してかびをつけ、朽敗(腐敗)させることです(全訳漢辞海)。
「朽」の意味が麹の語源となっているという考え方です(全訳漢辞海)。
「朽」は腐るという意味もあり、腐るという意味が「麹」という漢字に残り、
発展して現在の意味に至ります。
3 麹の語源2 掬う→みそ玉
「麹」のつくりは勺米(つつみがまえにこめへん)なのですが、意味は手で丸
く握るという意味です。そして「麹」の語源はふかした麦や豆を丸くにぎったみ
そ玉であるという考え方です(新漢和大辞典)。
みそ玉とは煮た大豆を臼でひき、団子に丸めてみそ玉をつくり、わらでからげ
て(縛って)家の軒下に下げておくと、天然のカビが生える、これをひきつぶし
て樽や桶に仕込み、熟成させたものです。このみそ玉を利用して、醤油や豆味噌、
米麹や麦麹を混ぜて米味噌や麦味噌ができます(みそ文化誌)。
みそ玉を利用した味噌づくりは味噌づくりの原始的な方法です。
「麹」という漢字でも語源のさかのぼりかたにより、腐敗とみそ玉という現在の
「麹」の持つ意味の一部がそれぞれ含まれています。違いが出てくるところが語
源の興味深いところです。
次回は「糀」の由来を中心に説明しようと思います。
*漢和辞典などでは「麹」は麦編が旧字の漢字として扱われていますが、意
味や語源は新字体の麦と同じであり、またパソコンで旧字が表記できないこと
もあり、このメルマガでも新字体の「麹」という漢字を使い説明しました。
参考文献 全訳漢辞海 戸川芳朗 三省堂
新漢和大辞典 藤堂明保 加納喜光 学習研究社
みそ文化史 全国味噌工業協同組合
中央味噌研究所

