第168回 栂野博士の発明

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★第168回          栂野博士の発明             ★

今日8日から10日にかけて、元台風24号や秋雨前線の影響で、四国から東北南部
にかけて大雨となる恐れがあります。通行止めや速度規制など、道路への影響
リスクが大きくなるようですので、車を運転する際には、最新の道路状況等を
こまめに確認し、低い場所を避け十分に注意して運転を心がけたいと思います。

今回は、『栂野博士の発明』をお届けいたします。

栂野博士は、理化学的な分析に基づく発酵への啓蒙だけでなく、醤油味噌の関連
する機械装置の発明も行っています。醤油に関する発明も数多くありますが、
今回は、味噌の関係する発明に絞って紹介します。

1.栂野式自働製麹装置
栂野博士は製麹工程を重視しており、麹の出来が製品の良し悪しを決定すると
しています。現在でも、当然のごとく、麹の良し悪しは製品に大きな影響を
与えています。

どのような装置かと言うと、断熱された麹室の内部を上下数段の棚状の床に
分けた構造になっており、各段の床は固定された網棚ではなく、複数の細長い
開閉板を並べた可動床です。開閉板は歯車、ラック、連桿、主軸を介して室外の
把手につながっていました。

把手を左右に動かすと、床の開閉板が回転して開きます。
すると上段の麹が、開閉板の隙間からほぐされながら落ちる。下段の床に受け
止められる。落下時に塊が崩れ、空気に触れる。品温と水分が均一化される。
という仕組みです。

当時の製麹は、麹菌を振りかけた米を麹蓋と呼ばれる縁のついた板に載せ、
職人がその麹蓋一枚一枚に対して、中心に米をまとめて盛り上げたり、薄く
延ばしたり、霧を吹いて水分を与えたりして、米麹を作り上げていました。
しかし、麹室自体は、土の壁や土間で保温のために狭いという環境にあり、
長年の使用により細菌的な問題は比較的少ないとはいえゼロではなく、
麹米に土が混入する可能性も高かったと思います。

しかし、この装置を使えば、人の手が麹に触れることもなく攪拌され均一な
温度や水分になります。さらに地下の麹室での酸欠の問題とは無縁となります。

2.丸醸式味噌搗機
味噌工場の機械名では、「搗く(つく)」とは、蒸煮大豆を押し潰す、大豆・
麹・塩を混ぜる、大きな塊を砕く、味噌を練って均質にする。という操作を
広く指します。
丸醸式味噌搗機は、主として蒸煮大豆の潰砕と、味噌原料の混練を機械化する
ものだったと考えられます。したがって、味噌の仕込みの際に使われる機械に
なります。

伝統的には、蒸した大豆を臼に入れて杵で搗いたり、踏み潰したり、手回しの
豆摺り機にかけたりしていました。大量生産ではこれが非常な重労働になります。
臼で搗くことは効率が悪く、足で踏むことは衛生上の問題が多くなります。

そこで発明されたのが、丸醸式味噌搗機で構造的には筒状になっており真ん中で
攪拌羽根が回転している構造です。上から原料を投入して、途中で羽根により
塊が切られて、攪拌されて、塩と蒸煮大豆と麹が均一に混合されることになります。

3.味噌漉機
味噌漉機は、熟成した粒味噌を細かく均一にして、漉し味噌・摺り味噌に仕上げる
機械です。

熟成後の味噌には、大豆の粒や皮、米麹・麦麹の粒、十分に崩れていない原料の塊、
繊維質や小さな夾雑物が残っています。これを人力の裏漉しや擂鉢に代わって
連続的に処理するのが味噌漉機です。

大正・昭和初期の味噌漉機は、一般に次のような構造です。

投入口
↓
送り羽根・螺旋
↓
味噌を前方へ圧送
↓
回転刃・押圧羽根
↓
多数の小孔をもつ漉し板
↓
細かく均質化した味噌

胴体内でスクリューまたは羽根が回転し、味噌を先端の目皿・金網・多孔板へ
押し付けます。軟らかい味噌は孔を通って押し出され、大きな皮や硬い塊は孔を
通らず、別に除かれます。

今日の食品機械の分類でいえば、単なる篩ではなく、スクリュー圧送式の破砕・
裏漉し機に近いものです。

味噌漉しによって、外観と食感が変わります。
・大豆粒が消え、なめらかになる
・麹粒が細かくなる
・硬さのばらつきが減る
・包装・計量しやすくなる
・味噌汁に溶けやすくなる
・製品ごとの粒度をそろえられる

味噌搗機や味噌漉機は、栂野博士のオリジナルの発明ではなく、その当時の
味噌業界で使われていた類似の機械もありました。
しかし、栂野博士の目指していた考え方として、人の労力を軽減する、人の手に
触れることなく一貫して衛生的な製品を作ることが、現在に受け継がれている
思想だと思っています。

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