メールマガジン No41~50
★第41回 「Haccpチャレンジ」について ★
立春も過ぎたというのに、寒気もまだまだ衰えない毎日が続いております。
インフルエンザの流行も、各地で警報レベルを超えています。
皆様、充分にご注意なさって下さい。
今回は、「Haccpチャレンジ」について です。
弊社は、昨年12月に厚生労働省の「Haccpチャレンジ」に登録をしました。
そこのあたりの経緯を申し上げようと思います。
弊社は、平成24年に「NPO Haccp実践研究会」の「認証Haccp」を取得しました。
これは、その時点では、Haccpの国の規格に味噌が指定されていなかったから
「認証Haccp」となりました。(現時点でも、指定はありません。)
なぜ、Haccpの認証を受けようと思ったかというと、Haccpには、様々な手法が
あります。
その手法や進め方が、品質向上に結びつくと思ったからです。
ただ、Haccp手法の全てが、思い描いていたことにピッタリはまった訳では
ありません。
最初に、味噌とHaccpがあまり関連性がないと考えていた根拠を申し上げると
まずは、細菌についての規格です。弊社は、ご存知のように発酵品を作って
います。
それには、細菌の活動は、不可避です。
発酵と腐敗の違いは、その結果が人間にとってプラスかマイナスかによって
分けられます。
Haccpは、細菌の活動のマイナス面だけを見ているような気がしました。
そもそも、Haccpは、NASAの宇宙食が宇宙で食中毒を起こさないために、
始まったことなので、食品には菌が少ない方が良いという考えがあるように
思っていました。(これは、後で簡単に修正ができる規格でした。)
また、味噌の安全性については、千年以上の歴史もあり、歴史が保証して
くれております。保健所が出来て以来、全国で味噌が原因による食中毒は、
一度も起きていないそうです。
話は逸れますが、味噌の上に病原性大腸菌O157を植えるとO157は48時間以内
に死滅するそうです。
そのように基本的に安全性の高いと思われる味噌にあえてHaccpを導入する
必要があるか。ということも、考えました。
それでも、なぜHaccpに関心を持ったかというと、最初にも書きましたように
様々な手法が、系統立て組み合わされているので、知識として持っている事は
会社としては、必要だと思ったからです。また、「NPO Haccp実践研究会」の
3日間講習に参加することによって、ほぼHaccp手法の基礎がマスターできる
と思ったからです。
また、半年に1回行われる講習は、色々な食品製造業から参加者があります。
従業員を順番に参加させることによって、他の食品製造業の状態を肌で感じ
取って、「井の中のカワズ」にならないようにすることは、大切なことと思った
からです。
私が、3日間講習に参加したのが、平成17年でしたので、そのときは今後
必要な知識を得るためでした。
その後、社内に受講修了者が増えるにしたがって、方向性は出てきましたが、
まだ、Haccp認証に向けて進もうとは、思っていませんでした。(次回に続く)
★第42回 「Haccpチャレンジ」について(その2)★
朝夕はまだ冬の名残はありますが、さすがに日差しは暖かくなってきました。
ひなまつりの昨日は、東京都心で16.4度を記録したそうで、4月上旬並みの
暖かさでした。
今回は、「Haccpチャレンジ」について(その2) です。
Haccpに対する疑問は、疑問として残しておいて、また、Haccpの認証を受ける
受けないと言う以前の事として、Haccp手法の優れている点を身につけるメリットは、
あると考えました。それは、以下の理由のよるものです。
なぜ、弊社がHaccp手法の取得を目指したかというと、二つ理由があります。
一つ目は、工場内の5Sの徹底を図りたかったからです。荒っぽい言い方をすると、
Haccpを一つの山に例えると、5Sは、山の5合目くらいに位置しています。
5Sとは、言うのは簡単ですが、実行は難しいものです。5Sを徹底させるためには、
5Sを目標にしては、それなりの成果しか得られません。
より高い目標であるHaccp手法の取得を目指すことで、5Sをより徹底できると
考えました。
別の言い方をすると、みんながHaccpを理解するにしたがって、5Sの重要さが
わかってきた。
5Sだけをやってきたならば、逆にそれほど5Sの重要性が、理解できなかったかも
しれません。
Haccpという仕組みのなかで、5Sを理解したことによって5Sがはかどったとも
言えます。
※ 5Sとは、「整理、整頓、清潔、清掃、躾(習慣)」の頭文字を取ったもの。
作業環境を衛生的に確保するために基礎となるもの。
もう一つの理由は、味噌が製品になるまでに時間が掛かることです。
味噌は、仕込んでから3ヶ月から、場合によっては、1年近く発酵熟成に掛かる
調味料です。
そのため、お客様の手元に届いた製品に問題があったら、仕込んだ時期は、
その何ヶ月も前になり、人の記憶ではもうフォローが出来ない過去となっています。
そのため、工程記録を調べることのみにて、原因を探ることとなります。
したがって、きちんとした工程の記録がないと、会社として説明が出来ず、
会社の信用を落とすこととなります。
私どもは、基礎調味料を作っております。調味料メーカーさんにも、みそを
原料として提供させていただいております。さらに、その調味料メーカーさんが、
惣菜などに使う調味料として提供されています。
そういう場合、私どもの味噌に問題があった場合、その問題は加工度があがるに
したがって、被害の拡大は累進的な大きくなります。
単純な例でいうと、コンビニのおにぎりは、具が5~6gで全体は100gです。
その具の部分の原料に問題があったら、具の20倍がおにぎりなので、問題は
単純計算で20倍となり、具の一部として使われていた場合は、20倍のそのさらに
何倍にもなってしまいます。
きちんとした工程記録を残せることが、Haccp手法にはあったので、
渡りに船ということで、勉強を進めることとしました。
(次回に続く)
★第43回 「Haccpチャレンジ」について(その3) ★
桜が見頃の季節となりました。お花見にはお出かけになりましたか?
日中は暖かくはなりましたものの、朝晩は気温差の大きい日もあります。
体調管理には充分ご注意なさってお過ごし下さい。
今回は、「Haccpチャレンジ」について(その3) です。
前回のお話の続きです。5Sの徹底と記録の整備の二つをHaccp手法を取り入れる
際の目標としました。それについて良い結果を得ることができました。
さらに、Haccp手法を取り入れることによって実現したメリットを申し上げます。
製造現場にとっても、記録をきちんとつけると、品質上の問題は、明らかに減り
ます。当然、クレームの回数も減ります。
そうすれば、クレーム処理のヒヤリングの回数や時間は、減ります。
ここまで来ても、記録をつけなくても、クレームがない製造現場は、記録をつけ
る必要がないのではないか、と言ってくるかもしれません。それほど、クレーム
が発生しているとは、全社的には思ってもいませんでしたが。
しかし、さらに、Haccp手法をすすめていくと、製造のポイントというか肝が
掴めてくるので、なにが重要なことなのかが、現場の担当者がわかるようになり、
無駄な動きがなくなります。そのことによって、記録をつける手間は、相殺され
るはずです。場合によっては、記録をつける手間を上回る効率が生まれます。
弊社で、Haccp手法の導入を行って、これまでの成果をご報告しますと、当初の
目的だった、2つの5Sと記録については、まだ100点満点とは言えませんが、
かなりの高水準になっています。さらに、成果としては、記録が充実することに
より、トレサビリティの水準が大きく上がりました。
また、データを取って解析することによって、わかってきたことがあります。
Haccp手法を取り入れる際に、代々先達から受け継いできたものの全てを否定する
こともなく、全てを踏襲するでもなく、個々の作業を記録することを最初に行い
ました。
その記録を元として分析を行い、適切な作業とは何かを見つけることが出来たので
当初に考えていた以上のボーナスとなりました。
いままで、味噌製造業が、伝統産業なのか、食品製造業なのかを考えておりました。
しかし、ここに来て、その2つは、対立する部分はありますが、一方的に片方の
やり方を否定する必要はないことを理解しました。
たとえば、伝統産業について、個人の主観なり、技量に頼っており、判断の基準が
不明確であり、個人によってバラツキが大きいと否定的な意見を持っていました。
しかし、Haccp手法を取り入れて、データやチェックポイントが掴めてくると、
データだけに頼らず、最後の判断は、人の官能で判断することがセーフティバルブで
あると考えるようになりました。
そのような部分を疎かにしないことが、伝統産業の持つ良さだとわかりました。
いままで、データがOKで、官能試験で駄目であったことは、ありませんが、担当者が
見たり、味わったりすることで担当者のスキルの向上につながると思っております。
今後、Haccp義務化に向けて、厚生労働省が様々な方策を出してくると思います。
それについては、注視しながら、折に触れて、考えを申し上げたいと思います。
★第44回 味噌の原料に適した大豆の条件 ★
五月晴れの日が続き、今が一年でもっとも快適な季節ではないでしょうか。
辛かった花粉症の症状も、徐々に和らぎつつあります。
今回は、「味噌の原料に適した大豆の条件」 です。
このお話は、メルマガの読者様からのご提案をきっかけに書いたものです。
読者様のご要望に沿ったものとは、言えませんが、ご興味があったら参考に
して下さい。
新・みそ技術ハンドブック※によくまとまっているので、引用してそれに
解説を加えます。
1.一般的評価
① 夾雑物、被害粒、石豆、割れ豆、未熟粒の少ないこと。
・夾雑物とは、大豆のサヤや枝などの植物性のものを含む異物のこと。
・被害粒とは、大豆が虫に食われていたり、大豆の皮が変色しているもの。
・石豆とは、水に浸漬しても吸水せず、蒸煮しても軟らかくならない豆。
②新穀であること。
・低温で保管されていれば、問題はありません。夏の暑さによって、大豆に
含まれる脂分が、変性してしまうため、保管温度には、注意が必要。
低温で保管された大豆は、吸水率も高く、蒸煮も早く軟らかくなる。
③異品種の大豆が混在しないこと。
・2種類以上の大豆が混ざっていると、吸水速度や蒸煮適性が違ってくる。
特に、蒸煮適性が違う大豆が混ざっていると、蒸煮時間が決められない。
2.品種特性の評価
①大粒粒であること。
・大粒の大豆は、種皮の割合が少ない(体積と表面積の関係から)。
②種皮は薄く、黄白色で光沢のあること。
・大豆の種皮は、味噌のざらつきや、味噌の色が変わりやすくなる原因の
一つとなる。
・光沢のある種皮は、健康な大豆の証拠である。
③へその色が淡いこと。
・大豆のへそは、目とも言います。へそが黒い大豆を黒目大豆、茶色い
大豆を茶目大豆と言います。濃い色のへその大豆で味噌を仕込むと、
漉した後もへそが残り(アイスクリームのバニラビーンズのように)、
異物と誤解されるため。
④品種・粒の大きさが揃い、割れ豆が少ないこと。
・一般評価の③でも述べたように、豆全体が同じ状態で吸水して、蒸煮で
柔らかくなることが、望ましい。
大豆のサイズが違うと蒸煮時間が決まらない。
⑤吸水率が高いこと。
・吸水率の高い大豆は、蒸煮も容易である。
⑥蒸煮が容易であること。
・早く蒸煮されることにより、蒸煮大豆の着色が少ない。蒸煮に際し高温
または長時間をかければ、軟らかい蒸煮大豆となるが、味噌熟成中の
着色原因の一つであるペントサンが分解しやすくなり、味噌にしてからの
着色の進行が早い。
また過度の熱変性はタンパク分解率を低下させ、香味に影響が出るので
一般的に好ましくない。(本文解説のまま)
⑦炭水化物含有量の多いこと
・⑤、⑥のような条件に合う大豆は、炭水化物含有量が多く、蒸煮大豆は
軟らかく、味噌になってからも組成は滑らかである。
⑧蒸煮大豆の色が明るく鮮やかに仕上がること。
・特に淡色系の味噌は、蒸煮大豆の仕上がりの色が、発酵熟成後の味噌の
色に大きく影響を与える。
また、赤色系の味噌でも、艶のある蒸煮大豆の色が発酵熟成後の色に
良い影響を与える。
⑨蒸煮大豆に食塩を加えても硬くしまらないこと。
・塩分を加えると脱水効果が出て、硬くしまる大豆がある。このような
大豆で味噌を仕込むと、最悪な状態として、味噌全体はビチャビチャ
していて、豆の部分がボソボソしている味噌が出来上がる。
⑩保水性が高いこと。
・⑨とおなじような意味です。
以上が、「新・みそ技術ハンドブック」ある味噌の原料に適した大豆の条件です。
ほぼ条件を網羅していると思います。
あえて、これに付け加えるとしたら、多少重複はしますが、
⑪脂質の少ないこと。
・⑦と微妙に重複しますが、炭水化物(デンプン)は、酵素分解で糖や
高級アルコールになり、味噌の甘味やコクを出し、たん白質は、酵素分解で
アミノ酸となり、旨味となる。
脂質も分解され、味噌にとっての有効成分にはなるが、それよりは、大豆の
炭水化物、たん白質が、味噌の出来上がりにプラスの影響を与えることの方が多い。
このような条件に合う大豆を見つけるためには、サンプルを貰ってよく見て、
さらに、蒸煮テスト、試験醸造(1ヶ月程度でわかる)等を行うことによって、
大豆を選択します。
前年は結果が良かった大豆でも、それと同じ品種、同じ産地でも、同じような
テストを行います。
★第45回 酵素と酵母について ★
関東甲信地方で梅雨入りが発表されました。
しばらくは鬱陶しい日々が続きそうですが、体調管理は万全に
過ごしていきたいと思います。
今回は、「酵素と酵母について」 です。
酵素と酵母は、字面も似ていて、働きも同じ傾向の働き(後述)をしているので、
同じものの言い方が違うだけぐらいに勘違いされている方までいます。
ここでは、味噌の発酵に大きく関係している酵母と酵素の違いについて、
説明したいと思います。
まず、大きな違いは、酵母は生物(微生物)で、酵素は物質(複雑なたん白質)で
あるということです。
別の言い方をすると、酵母は生き物(単細胞生物)なので、細胞分裂によって
増殖し、死滅によって減少します。
酵素は、物質なので、自己増殖はせずに、加熱などによる分解や化合、化学変化に
よって、別の物質になります。
以上の根本的な違いをご納得いただいたら、醸造をちょっと知っている方たちが、
よく誤解している2つのことについて、説明致します。
その1は、「酵素は、生きている。」と、
その2は、「酵母は、酵素の母である。」です。
その1は、酵素の働きを学ぶと、そう言いたくなる位、酵素は素晴らしい?
働きぶりをしています。
例えば、味噌に関係ある酵素で、代表的な酵素であるアミラーゼ(大きな括り)と
いう酵素は、デンプンをブドウ糖にまで分解します。
幾つもの分子がつながって出来ているデンプンの分子の決まったつながりの部分を
ピンポイントで切断して、別の性質の物質にします。
ここまでが酵素の働きの説明ですが、素晴らしいのは、その働きぶりです。
それは、酵素はその決められた働きを、半永久的に繰り返すことです。
分解する対象がある限りは、分解し続けるという働きぶりです。
うまい例えではありませんが、黙々と巣を作り続ける働きアリのようなイメージを
もたれるかもしれません。
そこで、「酵素は、生きている。」と言いたくなることもわからなくはありません。
しかし、同じような働きぶりを示すものに「触媒」があります。
ちょっと有名なのは、自動車のマフラーにあって、排気ガスの有毒な物質を分解して、
無害な物質に変える触媒です。この触媒の材質は、金属です。
触媒と酵素は、同じ働きをしています。触媒は金属が主な成分です。
そうなると、気持ちはわかりますが、「酵素は、生きている。」と言うことが、
科学的には正しくないことが、わかります。
少し違うかもしれませんが、酵素と同じような印象をもつものに「炎」があります。
例えば、オリンピックの聖火です。
これをギリシャのアテネから、ずっとリレーして持ってきた炎と、100円ライターで
その場でつけた炎は、科学的には、なんら違いはないことは、ご理解いただけると
思います。
宗教的なことは、コメント出来ませんが、ありがたみは、月とスッポンほど違います。
炎は、燃焼作用に過ぎません。加熱による酸化作用です。
しかし、炎が揺らめくのを見ると、原始の記憶につながるのか、
神聖な気持ちになります。でも、炎は、生きていません。
その2についてのご説明は、次号とさせていただきます。
★第46回 酵素と酵母について(その2) ★
じっとりと汗ばむ蒸し暑い毎日が続きます。
一昨日の横浜では、とても激しい雷雨で 落雷による停電や、冠水した道路も
数多くありました。
高温注意報が発表される日も増え、体調管理は万全にしていきたいと思います。
今回は、「酵素と酵母について(その2)」 です。
前号では、「酵素は、生きている。」についてご説明をしましたが、
今号は、その続きとなります。
その2は、「酵母は、酵素の母である。」
これは、部分的に正解ですが、酵母が、全ての酵素の生産元となっている訳では、
ありません。
酵母も酵素を作って酵素を利用しますが、それは、酵母だけに限らず、
全ての生き物(動物、植物、微生物)が、酵素を作って酵素を利用しています。
このような例えは、どうでしょう。
釘を打つ場合、大工さんはカナヅチを使います。
釘を打っているのは、カナヅチであり、大工さんでもあります。
家を建てるのは、大工さんですが、そのときに使うのこぎりや、カナヅチなどの
道具が、酵素だということは、いかがでしょうか。
ただ、そのカナヅチが釘がある限り常に打ち続けることが、ポイントですが。
人間は、胃で酵素を作って胃液に混ぜて、消化を助けています。
腸についても、同様です。極端な言い方をすれば、全ての酵素が無くなったら、
全ての生き物は、死滅します。
酵素は、地球に生物が誕生したと同時に40億年前から存在します。
また、酵母は、発酵に大きな関わりを持っていますが、現代では、たとえば、
乳酸菌発酵のように、全く酵母抜きで完成する発酵もあることが、わかっています。
きわめて大雑把な言い方をすると、味噌の発酵を表現する場合に、3つの要素が
あります。
麹菌の酵素の分解によるもの、乳酸菌の発酵によるもの、酵母の発酵によるもの、
この3つの要素で、味噌の発酵が行われます。
味噌の中でも、甘味噌と呼ばれる分野の味噌は、酵素の分解を発酵の主たる
要素としています。あまり、酵母や乳酸菌の発酵は、影響がありません。
さらに、その1でも触れましたが、酵母は微生物で、酵素は物質です。
そこに「親子関係」を当てはめることは、無理があるかもしれません。
「必要は、発明の母」に近い例えかもしれませんが、これは英語の諺が元のようです。
しかし、歴史的な経緯をみると、酵母は、発酵(ビール、パン)の研究によって
発見された経緯があるようです。
それは、イーストと名づけられ、日本に入ってきた際に「発酵の母から、酵母」と
翻訳されたようです。
たぶん、その当時は、発酵に関係ある微生物は、すべて酵母と一括りに呼んでいた
可能性も高いと思います。
微生物(生命)は、勝手に発生するという自然発生説(アリストテレスが唱えた)が
広く流布されていた時代なので、顕微鏡でしか見えない微生物が、膨大な種類を
持ち、人間の何千倍もの歴史を持っていることなど思いもよらなかったでしょう。
したがって、その2は、私なりの独断的結論を申し上げると、
「昔、酵母は発酵の母と言われていた。」というのが、正解ではないかと思います。
「酵母は、酵素の母」と言い切った場合、突っ込まれたら、その1の酵母と酵素の
違いを説明しなければならなくなり、下手をしたら、酵素やたん白質の説明を
求められる可能性が出てきます。
2回にわたり、酵素と酵母について、ご説明をしました。
分からない方は、ご質問下さい。
出来る限りお答えしますが、有機化学に詳しい方は、ご遠慮下さい。
ご質問を受けるのではなく、こちらが教えていただきたいです。
★第47回 夏休みにお勧めの本 ★
今年も、急な天候の変化に悩まされる日々が続いています。
突然の大雨や雷雨も多く、しばらくは非常に不安定な状態が続く様です。
熱中症対策等の体調管理も必要な時期です。
健康で安全な毎日が過ごせる様に、努めていきたいと思います。
今回は、「夏休みにお勧めの本」をお届けします。
●日本の食文化史 旧石器時代から現代まで 石毛直道 著(岩波書店)
●エコノミストの昼ごはん タイラー・コーエン 著、
田中秀臣 監修、浜野志保 訳(作品社)
●つまをめとらば 青山文平 著(文芸春秋)
日本の食文化史 旧石器時代から現代まで
文化人類学者として高名な著者が手掛けた日本の食文化の通史です。
あふれるほどの知識を紙面の関係で、抑えて書いていることが伝わります。
筆が乗ってきて、話が脱線しそうなところも、抑えています。
味噌・醤油についても言及があり、味噌に比べ、醤油は絞り粕が出るために
より工業化が進んだ段階で、普及したとあります。
肉食のケガレに対しての精進料理の考察には、文化人類学者ならではの切り口が、
見受けられました。
肉食をケガレと見なす仏教に入門したにもかかわらず、ガンモドキのような
食品や、山芋を原料としたウナギの蒲焼に挑戦する精進料理の矛盾についてです。
以上の2点以外にも、受け売りで話したくなるような話が数多くあります。
さらに、最後に4ページほど書かれている茶と酒、ハレとケの2分法や、
文化的料理と文明的料理についてなどは、文化史という点では、
あえて触れる必要がなくても、この2項目だけで本が1冊書けるような内容だと、
宮本常一ファンの私は思いました。
エコノミストの昼ごはん
世界的な経済学者が、食と料理に関する雑学と理論を述べたエッセイです。
おいしい料理(いわゆる外食)を点(グルメ本のように店名を上げて)ではなく、
面(傾向とその原因)に対しての考察が、興味深かったです。
大きな分類からそこを細分化して、個に至る手法が、経済学者らしいといえば、
らしいのですが、いい意味での食い意地が張っているので、分析にとどまらず、
自らのグルメ哲学を裏付けるために、経済学的な手法を利用していると
思える点もあります。
バーベキューに関する分量だけでも、相当の量があり、BBQに対して
「外で食べる埃っぽい串焼き」という印象しか持っていない私にとっては、
よくわかりませんでした。
しかし、元祖移民国家のアメリカにおける移民の(エスニック)料理店の選び方には、
理の通ったものがあります。
また、日本の外食事情は、家が狭く外出の機会が多く、外食店舗数が多く
競争が激しいために、全体の質が高い。と高評価です。
さらに、輸入料理(日本食以外)については、どれだけ本場の地での
経験を積んでいるかが、シェフの自慢になる。
たとえば、フランス料理だとパリの三ツ星レストランで、何年修行したとかが、
売り文句となる。としています。
ふと思ったのですが、いま、我々が普通に接している料理、たとえば、ラーメン、
カレーは、明らかに、輸入料理であり、しかも日本に渡来してから独自の進化を
遂げたもので、天ぷら、トンカツも、ちょっと考えたら輸入料理です。
このパターンを海外のスシ・ブームに当てはめられるのでしょうか。
これから、スシが海外でも原点回帰をするのか、現地で独自の進化を遂げるのか。
この本を読みながら、こんなことを考えたのは、前述の「日本の食文化史」を
読んだためでしょう。
つまをめとらば
この本は、第154回直木賞受賞の表題作を含む短編小説集です。
内容は、江戸時代が舞台の時代小説です。
さらに、分類をすると、剣豪、捕り物ではなく、人情噺というか、
人間関係がテーマのお話です。
最近の個人的な方針として、小説は読みだすとキリがないので、出来るだけ
遠ざかるようにしております。
それより先に読まなければならない(仕事に関係あるかもしれないと思った)本が、
山積みで、家庭内の立場が悪いことも、一因ではあります。
しかし、この直木賞受賞作は、知り合いに勧められて、読みました。
その推薦理由は、「作品中に江戸甘味噌が出てくる。」と言う
小説を勧める理由として、めずらしい理由からです。
読んでみると、作品中には出てきて、江戸甘味噌の特徴を掴んだ文章が
出てきますが、江戸甘味噌が作品の重要なキーワードになっているわけではなく、
当時の時代風俗を補う使われ方をしています。
小説の内容は、少し前の言い方だと、草食系初老男子の交友を描いた内容で、
ほんのりと香るユーモアというか、その当時の人はそれなりに大変だったのだろう、
と想像させる作品でした。
続けて、この著者の作品を読みたくなりましたが、我慢しております。
ときどきメルマガにて、読書感想を書いておりますが、ここ10年以上、
知り合いに本を勧められることは、ありませんでした。
私の本を選ぶ入口は、本屋で見かける。新聞・雑誌の書評欄で見る。
アマ〇ンでレコメンドされる。この3つです。
また、書籍を知人に勧めたことは、ほぼありません。
それは、相手の読書のツボが、わからないからです。
さらに、ご本人が教えてくれる今までのツボがわかっても、
相手のご希望は、そこからの新しいツボを見つけてくれと言うことでしょうから、
肩こりには耳を引っ張ると良いと言った、読書の経絡もわかりません。
なにで読んだか忘れましたが、
「本棚を見られることは、裸を見られることより、恥ずかしい。」
(ググって見ましたが、出典はわかりません。)
この意見には、昔ほど諸手を挙げて賛成はできなくなりました。
(体型の問題は、置いておいて)もちろん、反対の意見の持ち主になった訳では、
ありませんが、本を処分する(される)ということを覚えたので、
少しゆるくなりました。
残しておかなければならない本が、思った以上に少なかったからです。
★第48回 業界用語の解説 その1「伸びが効く」 ★
今年の8月は4個もの台風が上陸をし、平年値0.9個を大きく上回りました。
また、日本に接近した台風は6個でこちらも平年値3.4個を上回ったそうです。
週末から来週にかけては、台風第12号の影響で、西日本を中心に大雨の
予報も出ています。 今後も最新の情報に留意してお過ごし下さい。
今回は、「業界用語の解説 その1 伸びが効く」をお届けします。
方言には、別の地方では全くわからない言葉と、言葉は同じだけれど
別のニュアンスを表す場合につかうことがあります。
たとえば、「リンゴがボケる。」という表現です。
これは、札幌出身の知人から聞いた表現です。
これは、リンゴが時を経るに従って、水分が抜けて、果肉が軟らかくなり、
スカスカの歯ごたえになることを表現していますが、初めて聞いたときに
一瞬でその言葉の示している状態が、理解できました。
長年同じ業界にいると、業界ならではの表現が身についてしまいます。
表題に上げた言葉は、その言葉を聞いたことのない人が、一瞬で状態を
理解するとは、思えません。しかし、伝えようとしているニュアンスが、
そのような事態を体験した人には、一つの言葉で理解できると思います。
さて、汁物の塩分は、0.9~1.0%が最適とされています。
もちろん、みそ汁の塩分も、同じです。しかし、澄まし汁は、塩味と
ダシの旨味だけですが、みそ汁の場合は、味噌特有の味がプラスされています。
五味に分ける味覚でいえば、旨味とされる分野でしょうが、醤油にしても、
味噌にしても、塩味の他に特有の旨味を持っています。
その味噌特有の複雑な旨味を、ここでは単純に「みそ味」と呼ぶことにします。
この「みそ味」ですが、塩味とは切っては切れない関係にあるのは、
食塩は味噌の場合、添加物ではなくて原料であることから、容易に納得が
いただけると思います。
そこで、「みそ味」ですが、味噌汁は塩分12%程度の味噌に9倍から10倍の水を
加えて作ります。そこに具が加わるので、塩分が0.9%から1.0%になります。
話をシンプルにするために、具の無いみそ汁を作ります。これに、同じ塩分の
液を加えて行きます。
そうすると、みそ汁が塩分は変わらずに薄くなって行きます。
それを味見してみると、すぐ「みそ味」は、無くなります。
これは、「みそ味」が固形物に多くを由来している旨味であると言えるかも
知れません。醤油は、薄めて行っても、醤油らしさが長持ちします。
表題の「伸びが効く」は、薄めて行っても、「みそ味」が残っている味噌の
ことを言います。ただし、薄めて行って「みそ味」が無くなっていても、
隠し味としての効果は充分にあります。
料理の一工夫にご興味がある方は、お試し下さい。
ただし、カレーやデミグラス・ソースに入れると、味噌の酵素によりルーなどが
軟らかくなる可能性があります。
試す場合は、熱くなっているところに入れてください。
量が少ないと周りの味の引き立て役に回る味噌と、薄くなっても存在感を失わ
ない醤油、それぞれの特徴を生かした使い方をされると、より一層隠し味と
しての調味料の使い方に幅ができると思います。
★第49回 業界用語の解説 その2「塩角(しおかど)がある」 ★
朝夕は次第に肌寒く感じるようになって参りました。
ここ数日、昼間は夏日であったり 肌寒い日もあったりで、気温の変化に
ついていくのに精一杯でした。
体調管理を万全に、これからの季節に備えたいと思います。
今回は、「業界用語の解説 その2 塩角(しおかど)がある」をお届けします。
前回に続いて「塩角(しおかど)がある」ですが、これは、感覚的な表現です。
味噌を嘗めてみて、舌の上で塩味がピリッと来る感じがする場合に使われています。
味噌の中の塩の結晶の角が、舌の表面を刺激するような感じを受けるために
された表現です。
これは、味噌の熟成が不十分なために、まだ、味噌の原料の食塩が充分に溶けて
いないような味の印象を与えるために、される表現です。
しかし、仕込み直後の味噌でも、食塩が溶けずに固形のまま残っていることは、
ありません。大豆と麹と食塩がきちんと混ざっている味噌なら、米1粒が0.02g、
蒸煮大豆1粒が0.5gなので、1g単位でも部分的に塩分は、変わらないはずです。
さらに、味噌の成分は、発酵熟成を重ねることによって、変化しますが、
食塩(塩化ナトリウム)は、全くその影響は受けません。
最初から最後まで食塩のままです。
全体の重量も水分が若干蒸発する程度で変化はありませんので、塩分(%)は、
発酵熟成による影響はありません。
しかし、別の言い方をすると、塩味以外の味噌の味は、全て変化します。
これを化学的な表現をすると、微生物の持つ酵素の分解結合作用によって、
原料物質が分解化合する。
それによって、様々な物質が形成されて、味が複雑になります。
したがって、味噌に「塩角」があるとかないとかに、影響を与えていることは、
塩味の変化ではなく、その他の味によるものです。塩味以外の変化は、当然ながら、
発酵熟成がもたらしたものです。
まず、麹菌の酵素によって、デンプンが分解され、甘味成分を持つグルコース
(ブドウ糖)、オリゴ糖が生成されます。また、たん白質は、旨味成分となる
グルタミン酸やアミノ酸となります。
続いて、乳酸菌によって、乳酸が生成されpHが下がり(酸度が上がり)酸味が加わり、
青臭さが抑えられます。
最後に、酵母によって、麹菌の酵素が生成したグルコースやアミノ酸から、
さらに各種の高級アルコールを生成し、みそ特有の香りとなります。
味の面では、グリセロールを生成し、まるみ(おだやかな甘味)になり、
菌体自己消化物(酵母自身が分解したもの)は、ゴク味(バランスの取れた各種の味)
となり、上乗せされます。
味噌の発酵に関わる主な微生物が、味に与える影響を簡単に述べても、
こんなに種類があります。
みそ味の中では、塩味が最も強い味となっております。
しかし、発酵により様々な味が、加えられることによって、塩味の感じ方が変わって
くることが、人間の味覚の不思議さです。
2回にわたり、私が面白いと思った味噌業界の特有の言葉をご紹介しました。
何気なく使っている言葉でも、メルマガに書くとなるとうまく説明ができなくて、
色々と調べることとなりました。
勉強になりました。
★第50回 麹の「はぜこみ」が良い ★
日一日と寒さがつのりますが、いかがお過ごしでしょうか。
今年は、秋らしい秋を感じる事なく、冬の到来を間近に感じております。
様々な感染症が流行する季節に入ります。皆様、お身体には充分ご留意下さい。
今回は、麹の「はぜこみ」が良い をお届けします。
良い麹の条件は、「はぜこみ」が良いことです。
「はぜこみ」は、「破精込み」とも書きます。
これは、麹菌の菌糸が米の内部まで、喰いこんでいることです。
植物の根が土の中に深く伸びていくイメージになりますが、一か所から深く
米の中に入って行くのではなく、水が染み込んでいくように徐々に麹菌の
菌糸が内部に増殖していくイメージです。
味噌や清酒に使われている麹菌は、黄麹菌です。
他にも、泡盛を作る黒麹菌や、天然着色料の素となる紅麹菌などがあります。
これは菌糸の色が、単純に見た目の色で名付けられていますが、働きについては、
色々と違うようです。(以下は、黄麹菌についての説明です。)
また、麹菌は、菌糸の長さにより、長毛、中毛、短毛に分けられます。
麹菌の他の分類としては、どのような酵素を多く生成するかによって分けられます。
皆さんが、よく目にする麹は、長毛菌が繁殖した麹です。
麹の菌糸が絡み合って、2cmくらいの厚さの板状になっています。
これは、麹造りの後半で、米を厚さ2cmの大きな板状にして、麹菌を繁殖させる
作り方で作った麹です。包装の際に、パッケージのサイズに合わせてカットします。
ただ、長毛菌で作った麹の厚さを厚くすることは、出来ません。
麹が増殖すると自ら発熱し、その熱を外部から冷まさないと、熱によって麹自体が
変成してしまいます。
熱を冷ます方法は、色々とありますが、一番行われている方法は、風を送って
冷ます方法です。
そのために、麹の厚さを2cm程度にして、麹の風通しを良くします。
弊社で使用している麹菌は、菌糸の短い短毛系の麹菌です。
この理由の一つとしては、弊社が円盤製?機を使用しているからです。
円盤製?機は、機械式の製?機の一種で、直径が10m以上もあるステンレスの円盤
(送風のために、米粒よりも小さな穴が一面に開いています。)が回転するように
なっています。
その円盤の円周に接するように高さ50cm程度の淵が、垂直に囲んでいます。
この大きな容器の中に、種付けをした米を入れて、麹造りをします。
麹造りの後半になると麹の温度上昇に合わせて、麹の熱を冷ましたり、
繁殖状態を均一にするために、かき回して麹が塊にならないように、
拡砕機を稼働させたり、送風を行います。
短毛の麹菌を使うと、麹の層の厚さは、20cm程度まで厚くすることができます。
短毛の?菌を使うことによって、品質の良い麹を安定して、大量に作ることができます。
短毛の麹菌は、見た目は米の表面が、薄黄色の白に近い色の粉を吹いたような感じです。
御飯の表面の照りというか、輝きが艶消しになった感じです。
また、短毛の?菌は、味噌を仕込む際にも、メリットがあります。
麹の一粒一粒がパラパラしているために、他の原料の大豆や食塩と混合がし易くなります。
麹菌の酵素については、また、次号にご説明します。

