第167回 最新醤油味噌醸造法について その2
毎日、体に堪える暑さが続いておりますが、お変わりございませんか。
来週のお盆期間中、関東では雨の降りやすい日が続くそうです。
最高気温は30℃に届かない日が多いようで、数日でも猛暑から解放される事は
とても有難いです。台風15号の影響を受ける可能性もありますので、台風への
対策を少しずつ進めておくと良さそうです。
今回は、『「最新醤油味噌醸造法」(栂野明二郎・著)について その2』を
お届けいたします。
前回に引き続いて、「最新醤油味噌醸造法」の内容について、現代からの視点で
その底流を流れる発想や切り口について申し上げます。
早速、本文を引用(適当に省略意訳しています。)前回は、味噌の微生物と色に
ついての部分を見てみましたが、今回は「品質改善の利益」から始めます。
「需要者及び当業者側において品質改善の利益は以下のとおりである。
需要者側の利益①衛生上の利益 ②うまく食べられる利益。
醸造家側の利益①熟成の早き事の利益 ②品質良好なる利益 ③品評者に於ける
受賞の利益 ④競争に打ち勝つ利益 ⑤品質良好なるその他の利益」とあります。
この件に関しては、内容は至極理に適っております。それより、品質が優れた
製品を作れば、利益が需給両者に利益が生まれることを最初に書いて置くことが
素晴らしい考え方だと思います。
品質第一、安全第一の考え方だと思います。逆に最初に品質が安定するとメリットが
あることを説明することが、作るだけ作って売れなければ安くすれば売れるという
当時の社会の状況を言い表していると思います。
続いて、「微生物の作用」については、味噌の醸造上関連する3種の微生物に
ついては、前回で取り上げましたが、「これらの菌体生活原形質の主成分は
タンパク質で人が毎日食物を摂取し胃腸に於いて、各種の消化液を分泌して
消化吸収すると同様にこの微生物もそれぞれ各種の酵素を分泌して、大豆や
米を分解して摂取し以って自体を構成する。」
とあり、何より酵素の存在と役割が明確に理解されていることが驚きです。
その後、酵素の名前は現在とは違いますが、酵素ごとに役割が違うことや
酵母菌が糖類から香りを作ることも書かれています。
「醸造中に起こる4大作用を示せば以下のごとくである。
①糖化作用(主として麹菌による)
②アルコール発酵作用(主として酵母菌による)
③タンパク質分解作用(主として麹菌・バクテリアによる)
④熟成作用(主として化学作用による)」
現在の科学的な分析では、②はそのままの解釈であり、①が麹菌の酵素である
アミラーゼの分解作用、③が同じく麹菌の酵素のプロテアーゼによる分解作用
となっているので、ほぼこの①②③は、現代にも通用します。
④についても、熟成とはなにかという説明が難しいと個人的には思っているので、
この発酵は微生物が増殖する段階、熟成は微生物が減少する段階という説明と
合わせて、化学的に静かに分解化合が進んで行く段階と説明しています。
主なところを上げて現代ではどう変わって居るかを説明しましたが、明らかに
栂野博士の解釈の延長線上に現代の発酵学があることが、ご理解頂けたと思います。
科学的に発酵を考えることを始めて体系化していた栂野博士ですが、醤油や味噌の
製造機械の発明を行い、理論だけではなくその発明が実際の製造に役立っている
ことを次回説明します。
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